(昔話を読む前に……)
たった一つの昔話に、様々なストーリーが存在する場合が、多々あります。
その時代々々により、又、語る人間により、話が自然と変化して、多彩な顔を持つに到ったのでしょう。
かといって、その一つ一つのストーリーで、何が正しくて、何が間違っているということは、昔話にはないのではないでしょうか。 或る意味、そのどれもが正しいのかもしれません。
実際、龍や天狗や架空の存在が登場することもあれば、本当の歴史とは全く違ったり、ありえないことが昔話では語られます。
正しくなくても、そういう事は、たいした問題じゃないのかもしれません。
昔話の価値は、過去の心を今や未来の心に、人が人に語り継ぐ行為の中にこそ在るのではないでしょうか。内容よりも、語られるということにこそ、最も大きな価値があるのだと思います。
つまり語られることで、忘れ去られる事がないように、失われないようにすることが、昔話にとって一番大事なことなのかもしれません。