白山神社のお不動様


 昔、米ヶ脇に伊作という漁師がいました。
 ある冬の夕方、伊作は海に出て投げ網を打ちますと、手ごたえがあり網を引きあげました。しかし、魚は一匹も入っておらず、代わりに黒い木の根っこのようなものが入っていましす。よく見ますと木作りのお不動様でした。伊作は魚が捕れないことに腹を立てて、お不動様を元の海の中に投げ込みました。
 それから場所を変えて再び網を打ちました。しかし、今度もまた魚は一匹も入りません。それだけでなく今投げ込んだばかりの不動様が入っていたのです。伊作はギョッとしましたが、魚の捕れないのを不動様のせいにして、不動様に向かって毒づきました。
 「不動さん、不動さん、魚が捕れないのはお前様のせいじゃ。もう一度海に放り込まれるのがいやなら、今度の網で魚が捕れるようにしてみなされ」
 伊作は三度目の網を打ちました。網を引きあげて、伊作は「ウァッ」と叫びました。網も破れるほどに魚が入っていたのです。伊作は震え上がりました。あぶら汗を流して不動様の前にひれ伏して拝みました。
 こうして伊作の手によって海から上がってこられたのが米ヶ脇白山神社の末社、滝神社のご神体のお不動様だそうです。  


(米ヶ脇「滝神社」を参照)