「 海争い 」
むかし安島と崎とは、境界の海の所属について長年争っていました。
ある時、崎のおよしというおばあさんが、「この辺りの海が安島のものなら、岩の名前を知っているはずじゃ。みな言ってみい。」と言いました。しかし安島の者は誰一人として答えられなかったのです。
すると、およしばあさんは、「大きくて平たい岩はオオダイラ。小さくて平たい岩はコダイラ。突き出ている岩はツキダシグリ。ちょっと出ている岩はチョボグリ。赤い岩の海岸はアカバセ……」という具合に、次々と海の岩の名前を挙げていきました。
といのも実は、およしばさんの口にした岩の名前は、あらかじめ崎の人たちで作っておいた名前だったのです。
とうとうそれ以来、崎の海の境界線は、安島寄りに引かれるようになったという訳です。