雄島の石
自動車や鉄道のなかった昔、人々は船を使った海上輸送で、日本の北から南までいろいろな物をやり取りしていた。そして三国という町は長い歴史の中で、福井の重要な港として栄えてきた。
その三国の湊からやり取りしたものの中に、石があった。これは三国の石だけをさすのではなく、福井県内の石がそのままの形であったり、加工された形で様々な土地に送られた。
以下の話しは雄島の石にまつわる伝承である。
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昔、あるところに雄島の石を欲しがっているお金持ちがいました。この者は、どこかで「越前(福井)に、雄島というところがあり、そこの石は素晴らしい」という話でも聞いたのでしょうか、もしくは雄島の石を見たのかもしれません。そこで、それなら新しく庭を作る際に是非ともこの雄島の石が欲しいと、思うようになったのでした。
その思いは、ついに、この者の足を雄島の地にまで、運ばせました。ところが実際に来てみると、雄島の石がそう簡単には手に入らないことを知りました。なぜなら雄島は神の島であり、そこのものを軽々しく持ち運ぶことなど許されていなかったからでした。
この者が石を欲するのには、特別な理由などありません。雄島の石は、お金を出せば手に入るという訳にはいかないのです。
そこで人夫を雇い雄島の石を盗み出すことにしました。はじめは人夫も雄島の祟りを恐がってこの者の頼みを引き受けなかったのですが、お金を積まれ渋々従うこととなったのです。そして、とうとうこの者は、闇夜に紛れて雄島から石を盗み出すことに成功したのでした。
盗み出された雄島の石は、この者の庭石に使われました。欲しかった雄島の石を手に入れたのです、どれほど満足だったか知れません。
しかし、満足だったのも束の間、このお金持ちの家に次々と災難不幸がおとずれました。そして、ついにこの家は傾き、誰も住む者のいないところとなってしまったと云うことです。