モクリコックリ
昔、モックリコックリという大きな魚が、雄島さんに攻めて来ました。
モックリコックリの繰り出す攻撃に、雄島さんはとうとう九分通り殆どの部分が海の中に沈んでしまいました。
このままでは、雄島が沈んでしまう。雄島の神様は、弓に雄島の竹を取って作った矢をつがえモックリコックリに向かって放ちました。
ところが、モックリコックリには効きませんでした。
雄島の神様は諦めません。次々に竹の矢を作り、更に射て射抜き続けました。
そうこうしている内に、雄島の竹を全部使い切ってしまい、一本も無くなってしまいました。
モックリコックリの攻撃で、雄島が完全に沈もうとしているのに、そのモックリコックリをやっつける為の矢がもうありません。雄島の神様が困っていると、お宮の前に一本のかぶら矢が降って来ました。
雄島の神様は、早速、そのかぶら矢でモックリコックリを射ました。
すると、そのモックリコックリに向かって行く一本のかぶら矢は、次第にその数を増し、ついに千本の矢になって、この大きな魚なの両目を打ち抜きました。
こうしてモックリコックリはやっつけられ、、雄島の沈んでいた部分も元通りに浮かび上がりました。
これは丁度大晦日の晩のことであったので、翌日の元旦にはモックリコックリの死骸がアカバセという浜に上がりました。アカバセの石が今でも赤いのは、その時モックリコックリの血に染ったからだと言われています。
又、村の人々はこの魚を食べることにして、臓物までも食べたので、それからは正月に雑煮を食べるようになつたとか、モックリコックリは大変大きな魚だったので、食べても食べてもなくならず、とうとう次の年の正月まで残り、以来正月に魚をつくり次の年まで取って置くのはこの事があってからだとか言われています。