御嶽神社の社殿 

本殿 

【町文化財指定(昭和43年7月22日)】(町村合併により現在は坂井市)

 正面一間の向拝をつけた、一間社流造杮葺の小社殿で、現在はごく新しい瓦葺の覆屋の中にあります。今の覆屋は新しいですが、社殿は全体として非常によく古材が保存され、古くから覆屋で保護されてきたものであろうと思われます。
 向拝正面中央は蟇股が入り、内部彫刻は絵画的ながら比較的扁平で室町中期頃の特徴をよく示しています。題材は枇杷か梅らしきものに竜胆らしいものを配しています。この向拝虹梁鼻は表面雲文を彫った木鼻となり、雲の表現も時代色が出ています。しかしその裏面は簡単に唐草を彫っただけです。
 母屋は正面、両側面に蟇股を入れ、菊水・桃・芙蓉?を彫りますが、この三つは江戸時代中期を下らない頃の作と認められます。正面板扉は新しいのが目立ちますが、その下方折廻しにめぐらされた腰長押等は古いと思われます。勾欄もよく古材を残し、正面昇勾欄の架木の一つ、縁勾欄の架木・斗束・タタラ束などを除けば皆古く、四本の宝珠柱も室町のものを残していて、向拝柱・化粧タルキ・脇障子の框など皆古材で貴重です。
 ただ惜しむらくは、おそらく明治10(1877)年に現覆屋を建てた際だろうか、正面を45センチほど拡張し、勾欄をそれだけ前方へ送り出した事(縁板上面に元の勾欄の型が残っています)と、昇勾欄と宝珠柱との取付を変更した事(宝珠柱に古い穴)で、これは今後の修復の際に復元すべき点です。